銅管壁新聞
アルツハイマー病、狂牛病が銅イオンで治る!?
ハイテクリサーチセンター 平成13年4月2日の日本経済新聞にこんな活字が踊った。
「アルツハイマーの病変たんぱく、銅イオン投与で抑制」甲南大学の杉本直己教授がアルツハイマー病の際に脳内に沈着するたんぱく質の生成を、銅イオンを投与することで抑制する実験に成功したのである。治療法として人間の身体に銅を投入するのは難しいが、この原理を応用した医療品を作るのに役立つものと考えられている。


銅イオン アルツハイマー病は、正常な状態ならすぐに分解されるたんぱく質が、脳に沈着して固まり、神経細胞を侵すと考えられている。杉本教授はこのたんぱく質に銅イオンを混入させると、銅とたんぱく質のアミノ酸の一部が結合し、たんぱく質の増加を阻むことを確認した。


アルツハイマー  実験の成果を杉本教授はこうまとめられた。「もともと今回の実験は、DNAやRNAに金属イオンがどのような影響を与えるのかを考察する一環で、たんぱく質の構造変化も見てみようということで始まった。


タンパク質生成量と銅イオンの関係 そこで、たんぱく質に反応する蛍光体の発光強度を調べる方法で、さらにこれを原子力間顕微鏡という顕微鏡を使って実際に確かめた。すると銅イオンのない場合には、たんぱく質の沈殿が起こって繊維状のものが出ている。それに比べ、銅イオンが最初からあった場合には、これがほとんど生まれていない。これで我々は確実に、銅イオンがアルツハイマー病のたんぱく質を回復というか、構造を逆向きに戻すことが可能だ、ということに見つけ出した。おもしろいことに、たんぱく質の沈着が進み、量 が増えた後、銅イオンを投入すると、発光強度が大幅に下がることがわかった。いろいろな金属イオンでやってみたが、銅が一番効果 が高かった。ただし、この研究は、まだまだ始まったばかり。アルツハイマー病のたんぱく質の沈殿を抑制できたのは、あくまでも試験管の中でのもの。実際に生体系に適用したときに効果 を挙げられるかはまだ未知数だ。しかし、銅イオンのたんぱく質への抑制効果は、アルツハイマー病ばかりでなく、プリオン病、狂牛病、クロイツフェルト・ヤコブ病などにもうまく働くことが確認できた。銅イオンがこのようなたんぱく質の構造変化に大きな影響があることがわかったわけで、これからの展開では、大きな役割を果 たすことが考えられる」

 難病といわれたアルツハイマー病。その治療に一筋の光が見えた。銅という古くて新しい金属が、また新しいフィールドを広げようとしている。

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