給水や給湯配管に銅管を使用したビルや一般家庭で「水やお湯が青くなって困る」とか「青い水が出た」という問題を提示されることがあります。このような事例を詳しく調査してみると、水やお湯が青着色している事例はほとんど確認されていません。一般
に溶出した銅イオンの量は1mg/l程度の低い値で、こういう問題を提示された現場の水を透明のガラスコップに入れてみても、青着色している水は全くないのです。溶けだした銅イオンのために水が肉眼で青く見えるのは、約100mg/l以上の銅イオンが溶出した時くらいです。
水が青く見えるのは水の持つ特性で、湖や海の色を青く表現することと同じく、光の屈折によるものです。銅管から溶出した銅イオンの量 で水やお湯だけが青く見えるのではなく、海の水が太陽のもとで青く見えるのと同じなのです。その証拠には、銅管だけでなく、塩ビライニング鋼管の水でも浴槽に貯めてみると水深が増すに従って、青色に見えます。特にホーローやポリエチレン製の浴槽では、視覚的に水や湯が青色に感じられるものなのです。
【事例1】浴槽や布地が青くなったら
銅管を配管したビルや一般住宅で、銅管がまだ新しい時期に、銅イオンの溶出によって浴槽や洗面 器類またタオルなどが青くなったということが稀にあります。この際の応急的な処置として、次のような方法で除去することができます。
1.青い水の原因
給湯器及び配管(銅管使用の場合)から溶出したわずかのCuイオンと脂肪(身体から出たもの)または浴用石鹸の脂肪との反応によって生じた「銅石鹸」が、空気中の酸素、炭酸ガスと更に反応して青い色を呈したものです。
2.除去方法
市販のものではマジックリンフォームまたはマジックリンをスポンジに付けてこすれば除去できます。
バス専用のものは、比較的軽い汚れを対象にしていますので、換気扇の油汚れ専用のものがよいでしょう。
3.銅(Cu)イオン
飲料水の水質基準では、1.0ppm(mg/l)以下となっています。給湯水の場合通常0.2〜0.4ppmですが、この程度の濃度でも、銅石鹸の反応は起こります。
4.脂肪分
身体から出るものは避けられませんので、石鹸に注意して下さい。固形の浴用または洗顔石鹸がよく反応します。ボディシャンプーでは起こりません。
脂肪分はバスタブに吸着し易く、軽いのでキッ水線の部分によく付着します(手で触れるとザラついている場合が多い)。使用後は特にキッ水線部を中心にスポンジ等で水洗いして下さい。青い線が生じたら前記の洗剤で除去してください。
銅石鹸は水に溶けないので、ご苦労されていると思いますが、参考にして下さい。緑青や銅石鹸は毒物ではありませんので、ご安心ください。
★タオルや布類の場合
1.10%〜15%濃度の希酢酸溶液(家庭用食酢)を用いて、70〜80℃の温度中に浸漬すると、わずか数秒で脱色します。しかし、この方法を繰り返し用いると、タオルや布地が黄色味を帯びてくることがありますので、その際は漂白剤を使用してください。
【事例2】浴槽のキッ水線の青い付着物
青い水問題を提起されて調査を行ったあるマンションの例をとると、数十世帯の中でこの家だけが異常でした。
お湯を採取して水質調査を行った結果によれば、お隣のお湯と同様に銅イオン0.2mg/lで、水質的には何らの問題もないことがわかりましたが、苦情の浴槽にはキッ水の範囲に確かに多くの青い付着物が存在していました。問題はどうもこの辺にあるようで、水は青く見える固有の性質があり、この付着物によって青さが強調されたのではないかと考えられました。
付着物を採取して分析してみると、たんぱく質30〜40%、銅石鹸40%、カルシウム石鹸10%、鉄塩少量 という結果であり、付着物のほとんどは人体の垢と銅石鹸であることがわかりました。たんぱく質や銅石鹸は付着初期の状態であれば比較的簡単に除去できますが、お風呂等で乾湿が繰り返されていると、固着して除去することが難しくなってきます。お風呂の場合、家族構成等の事情によって使用の仕方もまちまちで、掃除の方法も異なっており、今回の過程も付着物を除去出来る十分な条件か充たされていなかったための問題発生と判断されました。
提起されるケースの多くはこの様な付着物による共通した事例で、付着初期には非常に落とし易いこと、そのための洗剤等を説明し、この付着物は衛生上何ら問題の無いことで了解されました。
【事例3】マンションの浴槽(大阪市)
大阪瓦斯では、大阪のNコーポで「青い水」の現象が見られるというので、給湯水を分析しました。現場で浴槽に満たされた前日使用水は明らかに緑青色を呈していましたが、銅イオンの分析結果
では、種々の給湯水は全て1mg/l以下の濃度であり、ポリエチレンビニルに採取した給湯水は無色透明でした。
そこで、浴槽の色調と見掛けの色調との関係において調査した結果、通常の半透明ポリエチレンでは種々の水及び使用・未使用のお湯を満たしても着色は見られず、Nコーポの浴槽に類似した白色塗装ポリエチレンでは水は何れの場合も緑青色に見えることがわかり、“青水”の原因は浴槽と水における光の悪戯で水が青く見えたものと判断されました。